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成年後見制度 ~その3~法定後見について最近の動向

2019年4月に入ってから、法定後見の報酬見直しの動きについて、マスコミ各社からニュースが流れました。

 

4月3日の朝日新聞朝刊には、次のような記事が載りました。

 

成年後見 報酬見直し促す」

最高裁 業務量・納戸に応じて> 家裁に通知

(2019年4月3日 朝日新聞朝刊 見出しより引用)

 

以下記事の引用を交えながら、解説を進めていきます。

(引用部分は「」でくくり表示します)

 

後見人に対しては、被後見人の財産の中から一定の報酬が支払われます。

法定後見の場合は、家庭裁判所の判断により報酬額が決定されます。

(任意後見の場合は、契約時の当事者の協議により決定します。)

 

現状は被後見人の財産額を基準に、報酬額が決められる傾向にあります。

弁護士、司法書士介護福祉士行政書士などの専門職と呼ばれる人たちが担当する場合、「東京家裁の『めやす』によると、基準は月額2万円で、財産額に応じて報酬が上がる。全国的にも、こうした運用が一般的とされ」ています。

一方、親族が後見人を引き受ける場合には「本人の財産を減らすことになるため、親族は(報酬の)受け取りを控える傾向にある。」という現状があります。

 

家裁により一度決定された報酬額は、後見業務量の多寡によらず後見が続く限り継続するのが普通です。

この現状に対し最高裁は、「業務量や難しさなどを報酬に反映させるよう、家裁に促し」ました。つまり「中身の分かりづらいパッケージ料金から、個別の業務に応じた料金体系への変更を、家裁に促した形」です。

 

報酬に関しては、親族からその不透明性に関する不満や批判があり、それに最高裁が応えた形ではありますが、最高裁の考える方向に進捗するかどうかは何とも言えません。

(以上で朝日新聞からの引用を終了します。)

 

 

報酬に関する「不透明さ」の他にも、よくマスコミで報道されるのが、後見人による被後見人の財産の「着服や横領」の問題です。

 

最高裁判所事務総局家庭局の「成年後見関係事件の概況(平成30年1月~12月)」によると、親族等が後見人に選ばれる割合は、わずか23.2%となっており、76.8%は弁護士、司法書士社会福祉士行政書士などの専門職が選ばれています。

 

2000年の法定後見制度開始当初は、この割合は全く逆で、親族等の後見人が7割強、専門職後見人が3割弱でした。

しかし当時は親族による着服の事例が目立ち、それを問題視した家裁が、専門職を指名する傾向に移っていきました。

 

平成27年の内閣調査によると、着服や横領されてしまうトラブルは、専門職後見人の場合にはこの年は37件、被害額は約1億1000万円にのぼっています。
一方、専門職後見人以外における不正は484件もあり、被害額は29億7000万円に上っています。

平成27年当時は昨年に比べて更に専門職後見人の割合が少なく、専門職後見人とそれ以外の後見人(主に親族後見人)の割合は、おおよそ7対3の割合でした。

それを考えると、専門職後見人以外の着服・横領がいかに多いか、お分かりになると思います。

 

ただし親族後見人の着服・横領は、全てが悪意であるとは限りません。

どちらかと言うと、「親のお金だから」とゆるく捉えて、例えば今まで通り援助してもらうことは問題なかろうとか、認知症の父の財産の一部を、母や孫など家族のために使うことは問題なかろうと、日常の感覚で判断してしまった結果が、法的には着服・横領となっているケースも多くあると思います。

成年後見制度に対する認識・理解が不十分なために、親族後見人の不正の実績が多く発生していると考えるのは、けっして不自然ではありません。

 

 

今後の動向を、大いに注目して行きましょう。