Do!「終活」 ~楽しみながら終活しましょう~

人生の終盤に大切な事を、分かりやすく解説します。

死後事務委任契約とは

子供や配偶者など自分の死後を託せる親族がいなければ、自分の死後の手続に関して、多少なりとも不安を感じるのは当然の事でしょう。

自分の葬儀、埋葬、そのほかの死後の後始末は、成年後見人や遺言執行者では対応ができません。

成年後見は、被後見人が死亡すれば契約が終了します。また遺言執行者は、遺言の内容を実現することだけしかできません。

つまり自分の死後の様々な面倒を見てもらうためには、死後事務の内容や費用をあらかじめ決めておき、信頼できる人と委任契約を結んでおく必要があるのです。

その委任契約が、「死後事務委任契約」と呼ばれる契約です。

 

 

死後事務委任契約とは、本人の死後に生じる様々な手続きをお願いしたいといった場合に、委任の内容を定めて締結する契約です。

具体的には、親族や知人等へ本人の死亡の連絡を行ったり、葬儀やお墓の準備・手続き、役所への届出、医療費等の支払い、遺品の整理・処分等を行います。

葬儀や遺品整理を始め死後の費用については、あらかじめ見込まれる金額を受任者(契約の相手)に預託しておくことが一般的です。そうして自分の死後に、資金的な滞りやトラブルが起こらないようにしておきます。

 

民法上の委任契約は、原則として委任者(本人)の死亡によって終了してしまいますが、死後事務委任契約では「委任者(本人)の死亡によっても委任契約を終了させない旨の合意」をしておきます。そのため、短期的な死後事務を委任することが、可能になります。 身寄りがない人や身内が遠方にしかいない、または身内に手間や迷惑をかけたくないといった場合に、あらかじめ信頼できる人と死後事務委任契約を締結しておくことで死後の手続に関する不安が解消されます。

また見守り契約や財産管理委任契約と併せて締結しておくことで、老後の備えを更に万全なものにしておくことができます。

 

 

契約は個人同士の覚書でも構いませんが、公正証書で行うことを強くお勧めします。

委任者の死亡後に開始される事務のため、きちんとした形で残すことが安心を確実にします。

尊厳死宣言書(終末医療宣言書)を作る理由

尊厳死宣言書」とは、どんな文書なのでしょうか?

 

完治する見込みのない病気などで、最期の瞬間が迫っているときなどに、過度な延命治療をせず自然な死を迎えたいという思いを、家族や医療関係者に伝えるための文書です。

法的拘束力はありませんが、例えば延命治療について自分と異なる意見を持つ家族がいる場合、文書を残しておくことで明確な自分の思いを伝えることができます。

法的拘束力はないとは言え、本人の希望であることは確かで、特別な事情がない限り、全く無視されることはないでしょう。

また親族間で尊厳死についての意見が分かれることが考えられる場合にも、本人の意思が明確に表現されていれば、後々の争いの種になることはないでしょう。

 

もちろん自書により宣言書を作成することも可能ですが、第三者機関を利用して宣言書を作成する方法もあります。その場合の方法には、①日本尊厳死協会の宣言書(リビングウィル)と、②公証役場において作成する尊厳死宣言公正証書の2つがあります。

公的な第三者的機関を利用して自分の意思を表現することは、より強い意思を表すことの客観的根拠ともなります。

 

 

意識がなくなり自分では意思を表現できない状態に陥いった時でも、尊厳死宣言書の用意があれば、宣言書が自分の意思を表明してくれます。

現在の日本の医療は「生かす」医療です。病院においては自然死を避け、できる限りの治療を続けるというのが基本です。

意識のないまま生き続けることは不本意だと日頃は思っていていても、意識がなくなってからでは訴えることはできません。

また植物状態での延命措置が長期間に及べば、その場合の家族の経済的負担は計り知れない金額になることが当然予想されます。

家族間で延命について意見が分かれることもあるでしょうし、尊厳死の判断をした家族の心理的負担は計り知れません。

 

しっかりした判断ができる間に、自ら自分の意思を明確にきちんと宣言しておく。

それは自分らしい最後を迎えるためだけではなく、家族への思いやりでもあります。

なぜ遺言を書いておいた方が良いのか

「子供がいない」とか、「前婚の相手との間に子供がいる」とか、「内縁関係のパートナーに財産を残したい」などの事情がある方は、真剣に対策を考え遺言の準備をしている事と思います。

しかし特別な事情がない人にとって、遺言は不要不急なツールなのでしょうか?

 

相続財産の大半が不動産だと言うケースは、一般にかなり多いと思います。そのような状況の時こそ、遺言を作成しておくことが、後の争いの回避関して大変有効になります。

分筆できるような広い土地であれば、共有せずに分けることも可能でしょう。

しかしそうでない場合、あるいは家屋などに関しては、どのように分けるのでしょうか?不動産の共有は問題の先送りに過ぎないと言っても過言ではないでしょう。

このようなケースでは自身の思いや意思を反映した遺言を残し、親としての深い思慮を示す意味があります。

 

一方、財産が少ないから争いの心配はないというのは、実は説得力のある根拠ではありません。

家裁の統計(平成24年度)では、遺産分割事件の財産額は1千万円以下が32%、1千万円超~5千万円以下で43パーセントとなっています。

つまり(平成24年度)家裁が取り扱かった遺産分割事件のうち、実に75%が財産額5千万円以下と言う事です。

財産額が5千万円以下と言う金額は、自宅プラス預貯金で直ぐに到達してしまいそうな金額です。

 

 

子供達が仲良く遊んでいた幼少期のイメージが、親の頭の中にはいつまでも残っている事だと思います。

親から見れば、子供はいくつになっても子供です。

しかし実際には子供達もそれぞれに家庭を持ち、自分の子を育て学費などの負担がかかってくるなど、状況は時の流れと共に変化しています。

幼い頃のようなシンプルな関係が、いつまでも続いている訳ではありません。

 

 

近頃「争族」と言う言葉が、キーワードのように使われています。

それ迄何事もなく仲良くしていた兄弟姉妹の関係が、遺産分割に直面した途端に、ちょっとしたボタンの掛け違いから、争いに発展することは多くあります。

遺言を残す事により、心配のない相続を実現しましょう。

任意後見契約

任意後見は、①判断能力が低下する前に、②自分の意思で契約し、③自分で後見人を決めます。一方、法定後見は①判断能力が低下した後で、②家庭裁判所が判断し、③家庭裁判所が後見人を決定します。

つまり法定後見と任意後見の大きな違いは、①契約の時期、②契約判断の主体、③後見人選定の主体の3点です。

 

 

任意後見契約を結ぶと法務局に登記され、この登記があると「任意後見優先の原則」が働き、法定後見の審判を受ける事は原則無くなります。

後見が必要な状態になったと任意後見人が判断すると、任意後見人は家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立をします。そして家庭裁判所が監督人を選任した時点から、後見が開始されます。

また後見が開始された後でも、任意後見の被後見人には、資格のはく奪や権利の制限がありません。

 

後見の対象となる権利義務関係の内容についても、法定後見制度は民法に規定されていますが、任意後見制度にあっては後見人と被後見人との契約によって定められます。

 

 

任意後見契約は他の契約との組み合わせ方により、一般に次の3タイプに分類されています。

 

1.<将来型>

 本人の判断能力が十分な間に、任意後見契約のみを締結するものです。

 本人の判断能力が低下したときに、家庭裁判所に監督人選任の申立をして、任意後見を

 開始させます。

 

  • <移行型>

 こちらも本人の判断能力が十分なうちに、契約を締結します。

 しかし<将来型>と違い、「見守り契約」や「財産管理契約」などの委任契約を結び、

 本人の判断能力の低下前から、日常の心配事を解消していこうというタイプです。

 任意後見制度の良さが、最も発揮される契約と言えるでしょう。

 

  • <即効型>

 すでに判断能力が少し低下していて、契約締結後はすぐに家庭裁判所に監督人専任の

 申立を行い、任意後見を受けたいというときに利用されます。

 

判断能力がしっかりしている間に、自分自身の考えで納得のいくサポート体制を整えて置く、これこそが任意後見の最大の特徴です。

財産管理委任契約

判断能力はあるが、自分で動くことが困難な状況になってしまったときには、親族や信頼できる知人に預金の引き出しや各種の支払い、または買い物などを依頼したいこともあるでしょう。

そのような場合に備えて、自分の財産の管理やその他の生活上の事務について、代理権を与える人を前もって選び、具体的な管理内容を決めて委任契約を結ぶことを「財産管理委任契約」と言います。(「任意代理契約」とも呼ばれます。)

 

親しい間柄や信頼する人との間であっても、きちんと契約を結んだ方が良いのは何故かと言えば、例えば依頼した人があなたの正当な代理人であることを、手続きや取引の相手に対して、証明できるようにするためです。

 また判断力が無くなったりご自身が死亡した後で、あなたの親族や相続人に対して、あなたが委任契約を依頼した相手が正当に委任事務を受任し、遂行していたことを証明するためなのです。

 

 

財産管理委任契約は、民法上の委任契約の規定に基づきますが、当事者間の合意のみで効力が生じ、内容も自由に定めることができます。

 

財産管理の開始時期や内容を自由に決められるため、成年後見制度のような厳しい縛りがありません。また契約締結後に本人の判断能力が低下したあとも委任契約は続くため、他の親族や第三者による財産の使い込みを防ぐことができます。

一方、財産管理委任契約には代理人に対する監督者が必須ではないため、代理人をチェックすることが困難であるというデメリットもあります。

 

契約の書面は、必ずしも公正証書にする必要はありません。しかし公正証書を用いない場合には社会的信用の点で不安なため、できれば公正証書にしておくことをお勧めします。

 

 

財産管理委任契約を単独で結ぶことも可能ですが、任意後見契約と同時に結ぶ事が一般的です。

判断能力が十分な間は財産管理契約で支援してもらい、判断能力低下後は任意後見契約でサポートしてもらうという移行体制を整えておくと安心です。

また財産管理委任契約と任意後見契約のセットに加えて、見守り契約もプラスして契約しておけば、より安心なサポート体制を組むことができます。

 

見守り契約

<6 Guardians ①見守り契約>

 

最近は子供とは別の家に住む夫婦2人世帯が増えており、自分たちの時間をゆったりと楽しむシニアが増えています。しかし夫婦2人世帯は、将来の単身世帯候補とも言われます。

子供が遠くに住んでいる、近くに親族もいない、まして一人暮らしになったら…。

そんな事を考え始めると、膨らむ不安を禁じ得ないでしょう。

そんな時に利用したいのが、「見守り契約」です。

 

見守り契約とは言葉の通り、定期的な訪問や電話連絡等で契約者ご本人の状況を確認し、変化が無いかを確かめたり、相談したりする契約のことです。

 

 

一般的に見守り契約は、任意後見契約とセットでなされます。

任意後見契約が開始されるまでの間、任意後見の受任者が定期的にご本人と電話連絡を取ったり自宅を訪問することで、ご本人の健康状態や生活状況を確認して、任意後見をスタートさせる時期を適切に判断することが可能になります。

また定期的な見守りを続ける中で、受任者とご本人とのコミュニケーションが形成されるため、深い信頼関係を築き上げていくことができます。

そして信頼感や相互理解が増すことにより、任意後見開始後の不安も解消されるメリットがあります。

 

一方、引き受け手によっては、見守り契約単体で受け付けている場合もあります。

郵便局や警備会社でも「見守り契約」を行っていますが、月1回程度の訪問又は電話連絡による日常生活の確認と、親族への報告が基本です。それに加えて、万が一の場合の駆け付けサービスがオプションで用意されている場合もあります。

総じて言えば事業者による見守りの目的は、定期的な安否確認と言えるでしょう。

 

見守り契約の内容は法定されている訳ではないため、同じ「見守り」と謳っていても受任者により内容が若干異なります。

任意後見契約とセットで見守り契約を結ぶ場合、その目的は単なる安否確認にとどまらず、先に述べた通り、後の任意後見の開始を見据えた具体的なものになると言えます。

 

見守り契約は任意後見契約とセットで結ぶ以外にも、他にも様々なパターンがあります。

財産管理委任契約とセットで契約を結んだり、見守り契約・任意後見契約・死後事務委任契約の3つの契約をセットするなど、ご自身の状況や不安に応じて自由に組み合わせる事が可能です。

 

 

シニアライフの安心を護る6つの契約

<6Guardians (六守護神)>

 

 

「終活」や「エンディングノート」などの言葉は、最近ではすっかりお馴染みになっていると思います。

週刊誌やTV、新聞などで頻繁に取り上げられているので、関心のある方は既に十分な知識を得ている事でしょう。と言うより、もうお腹一杯という方も、案外多いのではないでしょうか?

しかし知識や情報を得ることで安心してしまい、実際に行動に移している人がどの位いるのか、心配になることがあります。

私などもそうですが、興味をもって情報を次から次へと仕入れ理解するものの、結果、何も具体的な行動を起こさず、そのまま安心してしまっている方も多いと思います。

実際に行動に移さなければ知的好奇心の満足にとどまり、厳しい言い方ではありますが、何もしなかったのと同じ事にならないでしょうか?

 

かたや具体的に行動に移した方も、大勢いらっしゃると思います。

ご自身の不安を炙り出し、対策をエンディングノートにまとめたり、家族と話し合うなど、具体的な一歩を踏み出せていれば幸いです。

しかしエンディングノートや家族との話し合いだけでは、法的な保証がなく、時として不十分である場合があります。

各個人の事情によっては、きちんとした法的根拠を確保すべき場合があります。

 

私がご提案するのは、もう一歩踏み出し、完全な安心を得ることです。

それが、「シニアライフの安心を護る6つの契約 <6Guardians (六守護神)>」です。

 

「終活(エンディングノート)をベースに、オーダーメイドで安心を設計する。」

これをコンセプトに、総合的にシニアライフの安心を考えることが、一番適格な方法であると確信します。

 

 

<6Guardians (六守護神)>を構成するのは、次の契約と証書です。

 

  1. 見守り契約
  2. 財産管理委任契約
  3. 任意後見契約
  4. 終末医療宣言書
  5. 遺言(公正証書・自筆証書)
  6. 死後事務委任契約

 

 

 

(<6Guardians (六守護神)>概念図)f:id:syukatu_izu:20200513115328j:plain 

(©2019  かねこ行政書士事務所)

 

 

 

それではこの後<6Guardians (六守護神)>の具体的な内容を、順番に確認していきましょう。