Do!「終活」 ~楽しみながら終活しましょう~

人生の終盤に大切な事を、分かりやすく解説します。

医療について ~その3~臓器提供と献体

臓器提供とは重い病気や事故などにより臓器の機能が低下した人に、健康な臓器を提供して機能を回復させる治療の事です。

脳死を迎えた後または心臓が停止した死後に、臓器提供をすることができます。

 

脳死とは、呼吸などの生きていくために必要な働きを司る、脳幹を含む脳全体の機能が失われた状態の事です。失われた機能が、二度と元に戻らない状態を「脳死」と言います。

ちなみに植物状態と言うのは、脳幹の機能が残っていて自ら呼吸できる場合が多く、回復する可能性もあります。

つまり脳死植物状態とは、まったく異なる状態の事を言います。

 

脳死後は全ての臓器の提供が可能ですが、心臓停止後になると提供できる臓器は腎臓、すい臓、眼球に限定されます。

 

以前は生前に書面で臓器を提供する意思を表示している場合に限られていましたが、2010年に改正臓器移植法が施行され、本人の臓器提供の意思が不明である場合であっても、家族の承諾があれば臓器提供できるようになりました。

 

意思表示の方法は、大きく分けて3通りあります。

  • インターネットによる意思登録
  • 健康保険証等(運転免許証やマイナンバーカード)の意思表示欄への記入
  • 意思表示カードへの記入

 

2017年7月末現在における臓器移植希望登録者は約14,000人ですが、実際に移植を受けられる方は、年間およそ400人と言われています。

臓器移植希望者と臓器提供者の数のアンバランスがあり、常に希望者が臓器提供を待っている状況にあります。

臓器提供は有意義な選択の一つと言えるでしょう。

 

(公社)日本臓器移植ネットワークのHPに詳しい記述がありますので、興味をお持ちになった方は参照してください。

  https://www.jotnw.or.jp/index.html

 

 

次に献体について、ご説明いたします。

 

献体とは、医学部・歯学部における解剖学の研究・教育に役立たせるため、自分の遺体を提供することを言います。

献体を希望する場合は、(財)日本献体篤志会(http://www.kentai.or.jp/index.html)に相談するのが良いでしょう。

献体を受け入れている大学のリストを提供してもらえます。自分の条件や希望なども、相談することができます。

リストを受け取ったら直接大学に電話をかけ、受け入れの可否、条件などを確認します。

 

以前は献体を希望する人はあまり多くいませんでしたが、最近は考え方の多様化もあり、献体を希望する人が増えています。

登録者が多いため、受付を中止している大学もあるのが現状です。

大学と個別に相談を進め、受付が決定したら登録手続きを行います。

各大学により受け入れの流れが異なるため、その意味でも具体的に直接電話等でコンタクトを取って進める必要があります。

 

死を迎えたときには、登録してある大学へ連絡をとり、遺体が大学へ搬送されます。

解剖研究に付されるまでの期間も大学により異なりますので、問い合わせの時に確認すると良いでしょう。

大学側で火葬を済ませた後、遺骨は遺族に戻されます。大学によっては霊園を所有しているところもあり、その場合は希望すれば埋葬も可能です。

通常、搬送や火葬、埋葬は大学側の負担で行われます。

また大学に搬送される前に、通夜や葬儀が可能な場合も多く、それらも含めて大学側と具体的に打ち合わせをしておけば安心感が高まることでしょう。

医療について ~その2~尊厳死宣言

尊厳死宣言書」とは、どんな文書なのでしょうか?

終活に関心のある方はご存知かもしれませんが、初めて耳にする方も多いと思います。

 

完治する見込みのない病気などで、最期の瞬間が迫っているときなどに、過度な延命治療をせず自然な死を迎えたいという思いを、家族や医療関係者に伝えるための文書です。

法的拘束力はありませんが、例えば延命治療について自分と異なる意見を持つ家族がいる場合、公的な文書を残しておくことで明確な自分の思いを伝えることができます。

もちろん自書により宣言書を作成することも可能ですが、公的な第三者的機関を利用して自分の意思を表現することは、より強い意思を表すことの客観的根拠ともなります。

 

三者的機関を利用しての宣言書を作成する方法は、①日本尊厳死協会の宣言書(リビングウィル)と、②公証役場において作成する尊厳死宣言公正証書の2つがあります。

 

先に申し上げた通り、法的拘束力はありませんが、公的機関を利用して作成していることで、周囲の人に本人の強い意思を伝えることが期待できます。

 

 

日本尊厳死協会は、一般財団法人です。東京の文京区本郷に本部があり、日本全国に8つの支部を置いています。

HPがあり、協会やリビングウィルについての詳しい記事が出ていますので、尊厳死宣言への理解を深めるためにも、一度webサイトを閲覧してみることをお勧めします。

https://www.songenshi-kyokai.com/

 

次に公証役場公正証書として作成する場合ですが、大まかな流れは次の通りです。

  • 尊厳死宣言書に記載する内容を考え、原案を作成する。
  • 原案を持ち公証人と打ち合わせを重ね、宣言書の文案の作成を公証人に依頼する。
  • 公証人から出てきた文案を確認して、必要な構成を行う。
  • 公証役場にて、尊厳死宣言公正証書の作成を行う。

 

ざっと、このような流れになります。

 

 

法的拘束力はないとは言え、本人の希望であることは確かで、特別な事情がない限り、全く無視されることはないでしょう。

また親族間で尊厳死についての意見が分かれることが考えられる場合にも、本人の意思が明確に表現されていれば、後々の争いの種になることはないでしょう。

 

これらの利点を考え合わせると、尊厳死宣言書を残すことは非常に意義のあることだと、お分かりいただけると思います。

 

また意識のない状態に陥るなど、自分では意思を表現できない状態に陥る事もあります。

そのような時にも、尊厳死宣言書の用意があれば、自分に代わって意思を表明してくれます。

現在の日本の医療は「生かす」医療です。病院においては自然死を避け、できる限りの治療を続けるというのが基本です。

意識のないまま生き続けることは不本意だと日頃は思っていていても、意識がなくなってからでは訴えることはできません。

また植物状態での延命措置が長期間に及べば、その場合の家族の経済的負担は計り知れない額になることが当然予想されます。

 

どんな状態になっても命をつなぎたいと願う事も、もちろん間違いではありません。

どちらにせよ、自分の願う最期を遂げるためにはどうするか?

 

意識のない状態で生き延びたくないと考えるのであれば、尊厳死宣言書は必要な選択だと思います。

医療について ~その1~医療同意と終末医療

突然の体調の変化などのために、医師に対して医療について自分の考えや希望を伝えることが困難になることも、日常生活の中では普通に想定できます。

その時のために備えておきたいのが、終末医療に関する事前指示書です。

 

本人の意思の確認が困難な場合、病院は家族や周りの付き添いの人に医療行為の同意を求めて、その後の医療行為を行います。

同意の内容が延命治療に関するなど深刻な場合には、決断を迫られる家族にとしては様々な思いが交錯し、容易に決断が下せない状況に陥ることでしょう。

その時の家族の心の負担の重さは、想像に難くありません。

 

また家族による苦悩の選択の結果が、ご自身の希望と違ったものである可能性も考えられます。

家族の精神的な負担を減らし、後の争いを防ぎ、ご自身の希望を叶えるためには、終末医療の事前指示書を用意しておき、かかりつけのお医者さんや家族との間で、ご自身の意思を共有しておくことが重要になります。

 

 

現在の医療は、基本的に「生かす」医療です。

家族にも大きな経済的負担を強いる延命治療をご本人が希望していなければ、事前に意思を明らかにしておき判断の根拠を示しておくことで、医療機関と家族との話し合いをスムーズに運ぶ事ができます。

 

巷間よく言われることですが、病院においては「老衰死」という診断はほとんどなされないそうです。

老衰と思われる患者さんにも(延命)治療が施され、最終的に「肺炎」「心不全」などの病名が付き、それを死因としているため、病院内での死因には「老衰死」が少ないという話を聞いたことがあります。

一方、在宅医療では無理な延命治療はせず、自然の移ろいを診ていくため、老衰死の診断が多いそうです。

 

 

在宅での終末医療の前提として、在宅医療の選択がポイントになります。

訪問看護・訪問診療などの医療を選び、自宅での最後を迎える準備をします。

そのうえで終末医療の指示書を用意しておけば、医療機関と家族との話し合いを、円滑に進めるための指針となりえます。

 

終末医療の指示書の内容としては、次のような事柄を抑えておきましょう。

 

 ・できる限り救急車は呼ばない

 ・心臓停止後の蘇生術は不要

 ・人工透析はしない

 ・経口摂取不能の時は、人工的な栄養摂取手段を取らない

 ・(改善見込みのないときの)人工呼吸器気の取り外し

 ・水分補給、輸血、抗生物質の不要

 

 

自宅で静かな最期を迎えたいというご希望があれば、万が一に備えて、終末医療の事前指示書を用意しておきましょう。

かしこまった形式でなくとも、まずはエンディングノートに、過度の延命治療を希望しない旨を書いておきましょう。

それによって決断を迫られる家族の精神的な負担も減り、後々懸念される親族間の意見の対立も防止することができます。

成年被後見制度 ~その4~任意後見制度と民事信託

法定後見は「判断能力が低下した後」で、「家庭裁判所が判断」し、「家庭裁判所が後見人を決定」します。

一方、任意後見は、「判断能力が低下する前」に、「自分の意思で契約」し、「自分で後見人を決め」ます。

これが、両者の大きな違いです。

 

また更に後見開始後も、任意後見では(法定後見と違い)資格のはく奪や権利の制限がありません。

法定後見の方は180余りの欠格条項があり、多くの士業、公務員、医師、教員、会社役員などになる事(続ける事)ができませんでした。

しかし2019年5月の国会で、「成年被後見人の権利制限適正化法案」(これらの欠格条項を一括削除する法案)が可決されました。

今後の動向に、注目していきたいところです。

 

 

任意後見契約を結ぶと法務局に登記されますが、この登記があると「任意後見優先の原則」が働き、法定後見の審判を受ける事は原則無くなります。

また将来認知症になり後見を受ける事になっても、任意後見には資格のはく奪や権利の制限がないので、すぐに上のような事態になることはありません。

 

権利義務関係についても、法定後見制度は法定されていますが、任意後見制度にあっては後見人と被後見人の契約によって定められます。

 

 

任意後見は基本的に、契約締結後に家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立をして、監督人が選任された時点から後見が開始されます。

その「後見開始の時期」の置き方により、一般に任意後見契約は3タイプの分類がされています。

その概要は、次の通りです。

 

1.<将来型>

 本人の判断能力が十分な間に、任意後見契約のみを締結するものです。

 本人の判断能力が低下したときに、家庭裁判所に監督人選任の申立をして、任意後見を

 開始させます。

 

  • <移行型>

 こちらも本人の判断能力が十分なうちに、契約を締結します。

 しかし<将来型>と違い、「見守り契約」や「財産管理契約」などの委任契約を結び、

 本人の判断能力の低下前から、日常の心配事を解消していこうというタイプです。

 任意後見制度の良さが、最も発揮される契約と言えるでしょう。

 

  • <即効型>

 すでに判断能力が少し低下していて、契約締結後はすぐに家庭裁判所に監督人専任の

 申立を行い、任意後見を受けたいというときに利用されます。

 

 

さてここまで任意後見制度についてお話してきましたが、最近注目されているのが「民亊信託」です。

 

一般になじみのある信託銀行などによる信託は、「商事信託」と分類されます。

商事信託とは信託会社や信託銀行が受託者となり、業として信託を行うものです。

それに対して民亊信託とは、平成18年12月の信託業法の改正により誕生した信託です。

営利目的でなければ(反復性がなければ)、信託業免許を持たない個人や法人でも受託者になれるようになりました。

 

信託の登場人物には、財産を委託する人=「委託者」、財産の信託を請け負う人=「受託者」、そして信託財産から生じる利益を受ける人=「受益者」の3者がいます。

 

民亊信託を使えば、財産管理を家族や信頼のおける知人に任せることができます。

また遺言では困難な、数次承継も可能となります。

つまり遺言や後見では対応できないことも、民亊信託では可能になる使い勝手の良さがあると言えます。

 

 

個々人の状況や思いにより、どのような対応が良いのかは千差万別です。

と言うのも、平均寿命が延び以前とは比べようもない長寿社会になったため、認知症になる人が増えているからだと考えます。

成年後見制度 ~その3~法定後見について最近の動向

2019年4月に入ってから、法定後見の報酬見直しの動きについて、マスコミ各社からニュースが流れました。

 

4月3日の朝日新聞朝刊には、次のような記事が載りました。

 

成年後見 報酬見直し促す」

最高裁 業務量・納戸に応じて> 家裁に通知

(2019年4月3日 朝日新聞朝刊 見出しより引用)

 

以下記事の引用を交えながら、解説を進めていきます。

(引用部分は「」でくくり表示します)

 

後見人に対しては、被後見人の財産の中から一定の報酬が支払われます。

法定後見の場合は、家庭裁判所の判断により報酬額が決定されます。

(任意後見の場合は、契約時の当事者の協議により決定します。)

 

現状は被後見人の財産額を基準に、報酬額が決められる傾向にあります。

弁護士、司法書士介護福祉士行政書士などの専門職と呼ばれる人たちが担当する場合、「東京家裁の『めやす』によると、基準は月額2万円で、財産額に応じて報酬が上がる。全国的にも、こうした運用が一般的とされ」ています。

一方、親族が後見人を引き受ける場合には「本人の財産を減らすことになるため、親族は(報酬の)受け取りを控える傾向にある。」という現状があります。

 

家裁により一度決定された報酬額は、後見業務量の多寡によらず後見が続く限り継続するのが普通です。

この現状に対し最高裁は、「業務量や難しさなどを報酬に反映させるよう、家裁に促し」ました。つまり「中身の分かりづらいパッケージ料金から、個別の業務に応じた料金体系への変更を、家裁に促した形」です。

 

報酬に関しては、親族からその不透明性に関する不満や批判があり、それに最高裁が応えた形ではありますが、最高裁の考える方向に進捗するかどうかは何とも言えません。

(以上で朝日新聞からの引用を終了します。)

 

 

報酬に関する「不透明さ」の他にも、よくマスコミで報道されるのが、後見人による被後見人の財産の「着服や横領」の問題です。

 

最高裁判所事務総局家庭局の「成年後見関係事件の概況(平成30年1月~12月)」によると、親族等が後見人に選ばれる割合は、わずか23.2%となっており、76.8%は弁護士、司法書士社会福祉士行政書士などの専門職が選ばれています。

 

2000年の法定後見制度開始当初は、この割合は全く逆で、親族等の後見人が7割強、専門職後見人が3割弱でした。

しかし当時は親族による着服の事例が目立ち、それを問題視した家裁が、専門職を指名する傾向に移っていきました。

 

平成27年の内閣調査によると、着服や横領されてしまうトラブルは、専門職後見人の場合にはこの年は37件、被害額は約1億1000万円にのぼっています。
一方、専門職後見人以外における不正は484件もあり、被害額は29億7000万円に上っています。

平成27年当時は昨年に比べて更に専門職後見人の割合が少なく、専門職後見人とそれ以外の後見人(主に親族後見人)の割合は、おおよそ7対3の割合でした。

それを考えると、専門職後見人以外の着服・横領がいかに多いか、お分かりになると思います。

 

ただし親族後見人の着服・横領は、全てが悪意であるとは限りません。

どちらかと言うと、「親のお金だから」とゆるく捉えて、例えば今まで通り援助してもらうことは問題なかろうとか、認知症の父の財産の一部を、母や孫など家族のために使うことは問題なかろうと、日常の感覚で判断してしまった結果が、法的には着服・横領となっているケースも多くあると思います。

成年後見制度に対する認識・理解が不十分なために、親族後見人の不正の実績が多く発生していると考えるのは、けっして不自然ではありません。

 

 

今後の動向を、大いに注目して行きましょう。

成年後見制度 ~その2~後見の手続き

今回は後見の手続きについて、東京家庭裁判所の「成年後見申立の手引」を参考にして、申立から後見開始までの流れを確認します。

 

 

①申立までの流れ

 

まずは申立をする裁判所ですが、本人の住所地(住民登録地)を管轄する家庭裁判所となります。

申立ができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、成年後見監督人等、市区町村長、検察官になります。

 

申立準備としては、次の流れとなります。

 1.必要書類を集める

 2.申立書類の作成

 3.申立書類の提出

 

 

また「必要書類」の内容は、次の通りです。

 

 (1)申立書類(申立書、申立事情説明書、親族関係図、本人の財産目録及びその資料、

         本人の収支状況報告書及びその資料、後見人等候補者事情説明書、

         親族の同意書)

 

 (2)戸籍謄本・住民票(本人及び後見人候補者)

 

 (3)登記されていないことの証明書(本人)

 

 (4)診断書(成年後見用)、診断書付票/鑑定書

 

 (5)その他(都道府県により、提出を義務付ける書類が他にある場合があります。)

 

そしてとても重要なことですが、申立の取下げをするには、審判の前であっても家庭裁判所の許可が必要となります。

「(公益性や本人保護の見地から)後見開始の審判をすべきであるにも関わらず、取下げにより事件が終了してしまうことが相当ではない場合があるから。」(東京家庭裁判所成年後見申立の手引」)と言う理由からです。

具体的事例としては、「申立人が選んだ候補者が、後見人に選ばれそうにないから申立を取り下げる」と言う事は、認められない可能性が高いと言う事です。

 

②申立後の流れ <申立~審理>

 

 

申立書が整ったら、いよいよ申立をします。

 

 (1)申立人・後見人等候補者の面接

 

   申立日に即日面接となるため、家庭裁判所に必ず事前予約をしておきます。

   面接当日には、準備しておいた<必要書類>を持って行きます。

   (最近は郵送などで事前に提出する傾向にある様です。)

 

 (2)審理

 

   審理の内容は、次の通りです。

 

   a.本人調査(本人との面接)

   b.親族の意向照会

   c.<必要な場合は>鑑定 (平成28年度の鑑定実施は全体の約9.2%)

 

 

 

③審判

 

審理が終了すると、家庭裁判所は後見等の開始の審判をし、あわせて最も適任と思われる人物を成年後見人等に選任します。

後見人等は一人だけではなく、複数選任される場合もあり、また監督人が選任される場合もあります。

 

 

 

④審判の確定と登記

 

審判から2週間の抗告期間を経て、審判が確定します。

ここで正式に、「後見人等」に就任となります。(当然ここまでは後見業務はできません。)

 

審判が確定すると、家庭裁判所は東京法務局に審判内容の登記を依頼します。

後見登記が終了したら、後見人は「登記事項証明書」を取得して、それをもって金融機関、役所、不動産取引などを行います。

 

後見人等は就任後裁判所に対し、「初回報告」の義務があります。

「初回報告」とは、本人の財産目録と年間収支予定表の提出の事です。

選任後1カ月以内の提出が、民法に規定されています。(民法853条1項)

 

以上、ざっと流れを見てきましたが、時間的なことを最後に付け加えます。

東京家庭裁判所の「成年後見申立の手引」には、「申立を受け付けてから審判がされるまで1~2カ月かかります。」とあります。

審判がなされた後、2週間の抗告期間を経て登記が依頼され、その登記完了までにも通常数週間かかります。

つまり後見人等が登記事項証明書を手にするまで、申立から2~3カ月はかかってしまうと言う事です。

そして当然ですが、申立に先立つ準備の期間を含めると、さらに時間がかかります。

後見制度を検討する際は、時間的なことにも十分注意しておく必要があるでしょう。

 

また申立にかかる費用は、概ね2万円~10万円程度です。

 

 

費用の点からもう一つ、後見人の報酬について書いておきます。

 

後見が開始した後は、後見人に対しての報酬が発生します。

(後見人が申請しない場合は、もちろん報酬は発生しません。親族が後見人になった場合などは、多くの場合報酬を請求してないと思われます。)

 

報酬額は法定されてないため、審判の中で家庭裁判所が検討し決定します。

家庭裁判所の「成年後見人等の報酬のめやす」と言う文書によると、本人の財産状況により、1000万円までの場合は月額2万円、1000万円を超え5000万円までは月額3万円~4万円、5000万円を超える場合は月額5万円~6万円となっています。

監督人がつく場合には別途報酬が発生し、目安は上記の約半額となります。

成年後見制度 ~その1~法定後見の3つの類型

後見制度には、「未成年後見」と「成年後見」の2種類があります。

 

「未成年後見」とは、親権を行う者がいない場合、若しくは親権を行う者が管理権を有しない場合に、その未成年者の法定代理を行う制度の事です。

 

一方「成年後見」とは、「ある人の判断能力が精神上の障害により不十分な場合(認知症高齢者、知的障害者精神障害者)に、その人を法律的に保護し、支えるための制度です。

成年後見の定義について、東京家庭裁判所立川支部成年後見申立の手引」より)

 

成年後見」に関しては、更に「法定後見(法律による後見)」と「任意後見(契約により後見)」の2つに分類されます。

そして「法定後見」は、「後見」、「補佐」、「補助」の3つの類型に分かれます。

 

今回は、この「法定後見」の3類型について取り上げます。

 

 

 

さて「後見」、「補佐」、「補助」とは、具体的にはそれぞれどんな内容なのでしょうか?

 

精神上の障害による判断能力が不十分な程度に従って、当てはまる類型を判断します。

「後見」の場合は、「事理を弁識する<能力を欠く状況>」にある者。

「補佐」の場合は、「事理を弁識する<能力が著しく不十分>な状態」にある者。

「補助」の場合は、「事理を弁識する<能力が不十分>な状態」にある者。

と分類されます。

 

成年被後見人(後見を受ける人)及び、被保佐人(補佐を受ける人)には、法的に様々な資格制限や地位の制限を受けます。

例えば、国家(地方)公務員、医師、薬剤師、建築士、弁護士、司法書士行政書士、税理士、公認会計士、校長や教員、株式会社の取締役など、180を超える資格制限があります。

この資格制限の規定が、成年後見制度の利用をためらう要因にもなっています。

(補助や任意後見には、このような資格の制限はありません。)

 

昨今、この資格制限(=「欠格条項」)を廃止するための論議がなされていました。

政府は2018年3月13日に成年後見制度の欠格条項廃止の関連法案を閣議決定し、法案を2019年の通常国会に提出して、2019年5月に可決されました。

 

今後の動向が、注目されるところです。

 

 

次に後見人の報酬について、確認していきましょう。

 

家庭裁判所に申立を行い、所定の手続きを経て、後見の審判が下りると後見開始となります。

申立ができるのは、「本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、成年後見監督人等、市町村長、検察官」です。

そして後見人には、「親族、専門職(弁護士・司法書士社会福祉士行政書士等)、一般の市民(市民後見人)、法人」が就任します。

 

申立の際に後見人の希望は出せますが、必ずしも希望通りになるわけではありません。

被後見人等の財産が多い場合は、専門職が選ばれる傾向があるようです。

また希望が通らなかったからと言って、申立を取り下げることはできません。

成年後見申立ては、一方通行なのです。

 

後見人等の報酬は、本人の財産の額を勘案して、裁判所の審判で決定されます。

目安としては、専門職の後見人等がつく場合の報酬は2~4万円/1カ月程度で、後見監督人等がつく場合の後見監督人の報酬は、後見人の半額程度となります。

後見人に対して、年間24万円~48万円の報酬の支払いが発生する計算です。

例えば後見が10年続けば、総額で240万円~480万円程度の支出になります。

 

 

それでは後見は、どんな原因で終了するのでしょうか?

 

終了原因は「本人の死亡」、「成年後見人等の辞任」「本人の事理弁識能力の回復」、「任意後見の開始」となっています。

成年後見人の辞任」については、病気などやむを得ない事情がある場合に、家庭裁判所の許可を得て辞任をする事ができると定められています。

 

なお不正等で、家庭裁判所より成年後見人等を解任される事例がありますが、解任を受けた者は、以後二度と成年後見人に選任されることはありません。