認知症とその対応 ~その3~日常生活自立支援事業について
「日常生活自立支援事業」という事業を、ご存知でしょうか?
日常生活自立支援事業とは、ざっくり言うと、後見制度に近い役割を果たす制度と言えるでしょう。
厚生労働省のホームページには、次のように説明されています。
「日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うものです。」(以上「厚生労働省HPより」)
また、対象者は「次のいずれにも該当する方です」として、
「・判断能力が不十分な方(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な方)」
「・本事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる方」
(以上「厚生労働省HPより」)
となっています。
つまり判断能力は不十分ではあるけれど、この事業の内容を理解・判断できる程度の能力が残っている人が、この制度の利用対象者となります。
事業主体は都道府県・指定都市社会福祉協議会で、窓口業務等は市町村の社会福祉協議会等が担当します。
静岡県の場合、社会福祉法人静岡県社会福祉協議会が実施主体となり、県下33市町の社協に業務の一部を委託するという形態をとっています。
市町の社協に委託される業務は、自立支援サービス(メニューは3種類)です。
伊東市の社協の説明文書を参考に、具体的な内容を確認してみます。
1.(基本のサービス)福祉サービスの利用援助
①福祉サービスの利用または利用をやめるために必要な手続き
②福祉サービスの利用料を支払う手続き
③福祉サービスについての苦情解決制度を利用する手続き
④日常生活に必要な事務手続き(郵便物や通知の確認など)
2.(付随サービス)日常的金銭管理
①日常的な生活費の払戻し、預入などの手続き
②医療費や公共料金、家賃などの支払い、口座引き落としの手続き
③年金や福祉手当などの受領に必要な手続き
3.(付随サービス)書類等の預かりサービス
貯金通帳・年金証書・権利証・契約書類・印鑑等、金融機関の貸金庫に大切な書類等のお預かり。
注意事項としては、次の事項が挙げられています。
※契約締結能力(具体的な援助内 容の理解力)が必要です。
※医師による認知症の診断や、療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の有無は問いません。 ※「在宅で生活している方」「在宅で生活する予定の方」が対象です。
利用にあたっては1の基本サービスの利用が原則であり、付随サービスである「2.日常的金銭管理サービ ス」及び、「3.書類等の預かりサービス」のみを利用することはできません。
気になる利用料ですが、1回のサービス当たり1,000円です。(生活保護を受けている方は無料)
ただし、書類等の預かりサービスについては別途費用がかかると言う事です。
(詳細は< 伊東市社会福祉協議会(☎36-5512) 伊東市桜木町2-2-3>までお問い合わせください。)
このような割安な制度があるので、能力条件が合う場合には、検討してみることも良いかもしれません。
ただし契約などの法律行為の代理や、日常生活の範囲を超える財産管理などはサービスの対象とはなりません。
不動産の売却や、多額の財産管理などが必要な場合は、どうしても後見制度(法廷後見・任意後見)を利用せざるを得ません。