認知症とその対応 ~その2~認知症の理解(概要と種類)
認知症とは、一体どのような症状のことを指すのでしょうか?
物忘れをした時に、「まさか認知症?」などと冗談を言った事は誰にも覚えがあると思います。また人によっては、真剣にドキッとした経験を持ったことがあるかもしれません。
単なる物忘れも認知症も、記憶がなくなることには違いないので、一見共通しているように思えます。
しかし加齢による物忘れと認知症の間には、明確な違いがあります。
同じ物忘れでも認知症による物忘れは、体験した事全体をすっぽりと忘れてしまいます。それに対して加齢による物忘れの場合は、体験の一部分を忘れるという違いがあります。
例えば「ご飯を食べた事を忘れる」のが認知症、「何を食べたのかを忘れる」のが加齢による物忘れという具合です。
他にも認知症による物忘れには、「新しい物事の記憶ができない」、「ヒントをもらっても思い出せない」、「時間・場所の見当がつかない」、「物忘れの自覚がない」などが挙げられます。
加齢による物忘れの場合は、ヒントがあれば思い出すことができ、時間・場所の見当もつきます。加えて物忘れに対しての自覚を持っているなど、明らかな違いがあります。
この違いに照らし合わせてみて、もし不安を感じる場合には、病院で診察していただくことをお勧めします。
何事も、早めの手当てが肝心です。
さて一口に認知症と言っても、その種類は「アルツハイマー病」、「血管性認知症」、「レピー小体型認知症」、そして「その他の認知症」に大きく分類されます。
「アルツハイマー病」では記憶力に障害をきたし、また時間・場所・人物の状況把握が困難になる症状が現れます。
「血管性認知症」では、局所神経症状がみられ、脳血管障害があり、段階的な進行を辿ります。
「レピー小体認知症」の場合、初期には記憶障害の症状が目立たない場合が多くあり、見落とされることもあります。
しかし実際には幻視や、その幻視による妄想、また大声での寝言や意識の明瞭・不明瞭の差の激しさなどの症状が現れます。
認知症の予防策として、脳の活性化を日常から心がけることが、とても重要な事であることは、改めて言うまでもありません。
特別なことをやらなくとも、常に笑顔でいること、外で過ごす時間を確保すること、人の役に立とうとする意識を持つこと、複数の人と会話をすることなど、日常生活の中で自然に無理せず、楽しみながら継続していくことは、それほど難しいことではないでしょう。
この程度の事でも、脳の活性化には大いに役立ちます。
「諦めた瞬間から脳が委縮する」と言われます。
「できる」と確信すると、それを実現するために脳は必死に働くのだそうです。
色々なことに、明るく積極的にチャレンジする姿勢が大事です。
しかし楽しくもないのに、無理に継続しようとするのは禁物です。そうなると今度は「うつ」が心配されます。
終活と同様に、無理なく楽しめる範囲から、始めていくことが大切なポイントです。
認知症とその対応 ~その1~高齢化社会の現状
超高齢化社会の到来は、もうすぐそこまで来ています。
人口減少やいびつな人口構成といった深刻な問題を伴って、日々足音を大きくして近づいて来ています。
恐ろしいことに「人口問題」と「高齢化」は、セットでやって来るのです。
人口が減少しているのは、ご存知の通り若年層世代です。
若年層の人口減少は、将来に渡る更なる少子化を招きます。子供を産める世代の人口減少がマイナスのスパイラルを形成し、その後の人口減少を加速度的に進める要因になります。
逆に言えば、人口回復を望むためには、女性の生涯出産人数が劇的に増加する必要があると言う事です。
一方、「高齢化社会の到来」は、医療費の増加や認知症への対応などの、深刻な問題を生じます。
そんな状況について数字を使ってリアルに解説したのが、2017年に出版され話題になった「未来の年表」(河合雅司 著;講談社現代新書)という本です。
本の中で示されるショッキングな問題提起に接し、私も認識を改める部分が多々ありました。
主だったものを、目次から引用してみます。(すべて日本の事です)
(以下、「未来の年表」(河合雅司 著;講談社現代新書)の目次より引用)
2020年 女性の2人に1人が50歳以上に
2024年 3人に1人が65歳以上の「超・高齢者大国へ」
2026年 認知症患者が700万人規模に(高齢者の5人に1人が認知症患者に)
2033年 全国の住宅の3戸に1戸が空き家になる
2040年 自治体の半数が消滅の危機に
(引用終了)
「2024年の超・高齢化大国へ」については、一般に「2025年問題」と言われています。
しかし団塊の世代全員が75歳以上に到達するのは、実際には2024年の事です。
つまり「2025年問題」は、現実には1年前の2024年に発生します。
様々なシミュレーションの手法があるとは思いますが、一つの予測としてこれらの項目を見たとき、ぞっとするのは私だけではないでしょう。
今後20年余りの間に想像もつかないような世の中が、我々の目の前にその姿を現します。
総務省の「人口推計」(2017年6月1日現在)によると、2017年における日本の高齢化率(総人口における65歳以上の割合)は、既に27.6%にも上っています。
大きく日本全体でとらえたときに、「高齢化社会の到来」が綿密に検証・対応すべき重要な課題であることは、今更言うまでもないでしょう。
一方、個人の立場で高齢化問題を考えたとき、一番悩ましいのは「認知症」の事ではないでしょうか?
「未来の年表」においても、2026年には認知症患者が700万人を数えるという予測が出ています。別の表現をすると、「高齢者の5人に1人が認知症患者となる」という言い方ができるそうです。
高齢者の20%という確率は、ガンや成人病などと同等以上のレベルで、積極的に危機管理すべきレベルであると私は考えます。
ガンや成人病に対しては、様々な予防や健康管理、万が一の場合の保険など、具体的な対策を講じている方が多くいらっしゃるかと思われます。
同様に認知症に対しても、「認知症にならないか心配だ」と不安に思うだけではなく、より積極的に「認知症になった時のためどんな対策をしておくか」という対応が、皆に等しく必要とされると考えます。
次の章からは、認知症への対応と準備を、具体的に考えていきたいと思います。
身の回りの点検 ~その3~デジタル資産の整理
身の回りの整理は、まだ続きます。
最後にデジタル資産について、考えてみましょう。
ところで皆さんは、「デジタル遺品」という言葉を、お聞きになったことはあるでしょうか?
デジタル遺品とは、一つにはパソコンやスマートフォン、外付けハードディスクやUSBメモリ、DVDなどのデジタル機器に保存されたデータのことです。
もう一つには、インターネット上のデータ貯蔵庫であるDropboxやEvernote、他にもGoogleドライブなどに保管したデータも含まれます。
またSNS(フェイスブック、ツイッター、インスタグラム等)や、もしご自身で所有するホームページやブログなどがあれば、それらのデータも対象となります。
普段は便利に使っていて、すっかり日常生活に浸透しているこれらのデータも、主を失った瞬間から難破船のようにデジタル世界を漂い始めます。
適切な対応を施さない限り、その姿を正確に保ったまま、長きに渡りさまよい続けます。
それまで「デジタル資産」であったものが、その瞬間から「デジタル遺品」に変わるのです。
「人に見られたくないデータ」、あるいは逆に「伝えたいデータ」など、自分の死後、自分の思い通りデータを処置できるような準備をしておく事が大事です。
それでは具体的に、どんな事に気を付ければ良いのでしょうか?
データに関しては<削除する>のか<残す>のか、その切り分けは自分にしかできません。
大きく分類してどちらに属するデータか、それをいつも意識しておく事は、普段の心がけとして大事なことです。
またSNSやホームページ、ブログ等についても、死後の扱いを家族に伝えておかないと、残された家族はどう対処してよいか分からず、家族間の意見も分かれ、困ってしまうことでしょう。
最近はネット銀行やネット証券も、多く利用されています。
手数料の安さや手軽さ、利便性などの理由から、口座を開設している方も多いと思います。
ネット銀行やネット証券は通帳等がないため、後々見落とされる可能性もあります。
最低限どこに口座を持っているのか、一覧表にしておくことは有効なことです。
それでは次に、有効な対策をどのように用意しておくかについて、具体的に話を進めていきましょう。
「伝えるべきデータ」と「削除するデータ」を区別して、別々の記憶媒体に保存しておきます。
そうする事によって、将来の適切なデータ処置が期待できます。
ただし「削除するデータ」は、自分でマメに消しておく必要があります。
(もし不可能であれば、守秘義務のある専門家に相談してください。)
SNSやホームページ、ブログ、インターネット上のデータ貯蔵庫などについては、IDとパスワードの記録を残しておきます。
その上で、個々にどのようにして欲しいのか、希望を書き残しておくことをお勧めします。
自分の意思を書き記しておく事により、残される家族の心の負担を軽減します。
それから気を付けたいのが、メルカリやYahoo!オークション、または自己が開設した物販のホームページなどです。
注文を受けたまま放置されているような事態に陥らないよう、商品の取り下げやホームページ閉鎖など、対応を忘れてはいけません。
※デジタル遺品に関しては、当事務所で監修をしたwebマガジンに分かりやすく解説があります。
ぜひ次の記事(2018/7/19)も、ご参照ください。
TIME&SPACE(KDDIがお届けするIT×カルチャーマガジン)
「スマホやパソコンに残る『デジタル遺品』今からできる遺族の対処法は?」
身の回りの点検 ~その2~物の整理
日常使っている物や身の回りの品の見直しは、実はとても厄介な作業です。
例えば写真やアルバム、ノートや日記、衣類や本、趣味で集めたコレクションの品々など、ちょっと思い付くだけでも相当な量になるはずです。
価値のある骨董品や絵画であれば別ですが、日常の品は身近であればあるほど、他の人からすると、その価値には見当がつかないものです。
自分にとっては「空気のような存在」になっている物は、改めて数え上げると結構な分量すなると思います。
長い人生を生きてきたわけですから当然のことですが、その整理を家族に委ねるとすれば、家族の負担が大きなものになることは想像に難くありません。
客観的に価値のないと分かっているコレクションであっても、いざ家族が処分しようとなると、故人との思い出が邪魔をして、なかなか決心がつかないものです。
その反対に売ればたいそうな価値がある物であっても、そうと知らされてなければ、うっかり捨ててしまうこともあるかもしれません。
ましてや家族に一度も話したこともなく、箪笥の引き出しの奥深くに密かに隠してあった場合など、その存在にすら気付かず、ほかのものと一緒に捨ててしまうことさえあり得ます。
故人の写真やノート、日記なども、家族にとっては捨てる決心を付けるのが、なかなか難しい物の一つです。
必ずご自身で整理をしておくべき所以が、そこにあります。
そういう物は嵩も張りますので、例えば写真などはスキャナーで読み取り、デジタル化しておくのも一つの方法です。
もし後世に残したくない写真などがあれば、ついでにその時に処分してしまうことも検討しましょう。
ノートや日記についても同様の判断をして、なるべく身軽にしておきます。
作業を進めるうえで一番注意しなくてはならない事は、一つ一つの品の思い出に浸らず、ドライに進めると言う事です。
アルバム整理をするはずが写真の閲覧大会に変わってしまい、肝心の片づけは「また今度」と言うのは、誰しも経験があることと思います。
そうなるとただ散らかすだけで、かえって仕事を増やしてしまう結果になります。そうならないよう、十分に気を付けましょう。
何年も着ていない衣類も、相当数あるのではないでしょうか?
勿体ないとの思いから何となく取っておくと言うのは、誰しも経験があることと思います。
しかし日常着られる衣服は、限られています。1シーズン着なかったものは不要と判断して、どんどん処分する潔さも必要です。
必要になったら、また買えばよいのです。
高くなくとも新しいもの、清潔なもの、今風のものを着ていたほうが、見栄えも良く、おしゃれなシニアを演出できます。
本についても、今は手軽に売ることができます。思い切って整理して、売りにいってみましょう。
帰りにその売り上げでおいしい食事を楽しめたら、蔵書していた時とはまた違う満足が生まれること請け合いです。
そうやってなるべく持ち物を減らし、シンプルに暮らして、新しい生活を呼び込むことに気持ちを向ける。そうする事で、今までとは違った楽しさに巡り合えます。
新しいものが入る余地を用意しておかないと停滞が続く。
そのくらいに考え、こだわりを捨てて、生活に新風を吹き込むことを楽しみましょう!
身の回りの点検 ~その1~財産の管理・整理
終活の準備として、まずは身の回りの点検からはじめてみましょう。
将来エンディングノートを作るときの、全体像が見えてきます。
また一気にエンディングノートの作成にまで至らなくても、身の回りの点検を行った範囲内で整理がつき、その部分だけでも役に立ちます。
軽い気持で、始めましょう!
一番先にまとめておきたいのは、やはり財産関係のことです。
そのためまず初めに、資産の一覧表を作成することから始めます。
今後きちんとエンディングノートに書き留めるためのメモとして、ごく簡単な表で良いので整理しておきましょう。
書き出す項目は、次のような事項です。
・不動産(この段階では「何処に何があるか」程度の簡単なメモでもOK)
・預貯金(銀行名、支店名、できれば口座番号。残高は不要。)
・株式や投信を保有している先の証券口座
・加入している生命保険、年金保険、損害保険
・保有しているクレジットカード
・その他の価値のある財産
・公的年金のこと
・(もしあれば)負債
エンディングノートに向かい、これらの事項を一気にまとめようとすると、かなり高い確率で嫌になり、延ばし延ばしになってしまうことでしょう。
少しずつ形を整え、整理したところ迄で利用価値があるようにして、ゆったりと準備していきましょう。
そのほうが気を楽に持て、長続きすることでしょう。
一覧表作成の段階では、細かいところまで正確にリストにする必要は、まったくありません。
一つ一つ調べていると、途中で面倒になってしまうのが落ちではないでしょうか?
(少なくとも私などは、すぐに飽きそうな気がします。)
簡単な形式であってもリスト化しておけば、後々の作業の範囲が分かり、作業量や進捗を見渡すことができます。
またリストがあれば、万が一の時にも、残された家族の負担が大いに減少します。
昨今はインターネット銀行やインターネット証券を、活用している方も多くいらっしゃると思われます。
それらについてはまた後の章で詳述いたしますが、ネット口座は通帳や紙ベースの明細が存在してないことから、見落とす危険性が大いに懸念されます。
メモ程度であっても一覧表を残しておけば、そのような見落としを防ぐことができます。
一覧表を作ることの意義・重要性は以上の通りで、十分ご理解いただけた事と思います。
さらにもう一つ付け加えるならば、不要な口座やカードはできるだけ整理してしまうことをお勧めします。
作成した当時は、様々な事情から必要であったことでしょうが、現在稼働していない銀行や証券の口座、クレジットカードなどがあれば、口座そのものを解約してしまいましょう。
財産構成をシンプルにしておくことも、家族の負担を減らす大事な要素になります。
また場合によっては生前贈与を検討することも、有効な財産整理となることがあります。
その際は税金関係の事もきちんと調べ、できれば専門家に相談しながら進めると良いでしょう。
終活の準備 ~その2~
「終活」を進めるうえで有用なパートナーとなるのが、エンディングノートです。
さてそれでは、いったい何をどのように、ノートに書けば良いのでしょう?
エンディングノートには、法的な効力はありません。そのため形式にとらわれることなく、ご自身の肉声に一番近い内容を、自由に残すことができると言うメリットがあります。
つまり自分で直接頼めなくなったときに、あなたに代わって残された家族に語り掛ける、とても重要なツールと言えます。
何を書いても自由ですが、次のような内容は、一通りチェックしておくと良いでしょう。
- 半生を振り返り自分史をまとめる
大切な思い出を時系列に辿って、自分史をまとめることも楽しい作業となるでしょう。また配偶者・子供・友人など人ごとに、思い出や感謝の言葉をつづっても良いでしょう。
そして文章だけでなく、思い出の写真や絵など、目で見て感慨深いものに仕上げるのも楽しい演出の一つです。
- 現在の状態について
・健康状態(病歴・持病やかかりつけの病院、服用中の薬など)
・趣味嗜好(好物や嫌いなもの、趣味など)
・交友関係(親しい人や所属しているサークルなど)
自分しか知らないことが、多くあるはずです。これらを整理しておきましょう。
- 将来の不安や困りごと
将来の不安に関しては、置かれた環境によって、人それぞれに大きく違うところだと思います。
1人暮らし、夫婦2人暮らし、子供たちと同居など、世帯構成によっても違ってきますし、親類・子供など近しい関係の人が近所に居住してるかどうかによっても、各人の感じる不安のは人それぞれと思われます。
財産や身の回りの世話などについて、自分の状況に沿って課題を洗い出しておくことは、高齢や病気になった時の備えとして非常に有効です。
ペットを飼っている人は、もし飼うことができなくなった時の対応も考えておくと安心です。
- パソコンや携帯のデータ
SNSのアカウントや写真、メール、アドレスなどの個人情報の扱いをどうするか?
デジタル社会の恩恵に浴していればいる程、細かい対応が必要になります。
またその前提として、使用しているパソコンや携帯などの電子機器のパスワードが分からないと、電子機器を立ち上げることができませんのでご注意ください。
判断がしっかりしている間に、最低限の選別を行い、削除したいデータやアカウントは、自分で削除しておくことをお勧めします。
有料サイトの契約なども記録に残しておかないと、解約ができず永遠に料金が請求されることにもなりかねません。
またネット銀行やネット証券を利用する方も多いと思いますが、こちらの対策も忘れてはなりません。
- 日記や写真、コレクションなど
日記や写真も処置を指示残しておかないと、万が一の時に、残された家族に判断をゆだねるのは酷な事です。
同様にコレクションも、家族にとっては判断をするのが難しいでしょう。
- 最後の瞬間について
延命治療についての考え方、もしもの時に知らせて欲しい人のリスト、葬儀の形式などに希望があれば、必ず書き留めておきましょう。
特に延命治療に関しては希望を残していなかった場合、家族は様々な思いの中で判断せざるを得ません。その心中は、はかり知れないものがあるでしょう。
ざっとこのような事項を意識して、まとめればよいと思います。
ただ人により不要な項目もあると思いますので、ノートを用意したら書きやすい部分から、ゆったりとした気持ちで、楽しみながら書き進めれば大丈夫です。
エンディングノートの種類については、市販のノートや、いろいろな団体で配布しているものなど、選ぶのに困るほど各種あります。
目に付いたものを手に取り、パラパラとめくってみて、自分に合いそうなものを見つけてください。
そしてエンディングノートを書いたことと、保管している場所を、信頼できる人物に必ず伝えておきましょう。
準備万端に整えても、せっかくのノートがタイムリーに発見されなければ、何の役にも立たちません。
さて以上で総論を終了して、次回からは項目別に解説していきます。
終活の準備 〜その1〜
それでは実際には、どんなことから始めれば良いのでしょうか?
実際に「終活」に取り組む前に、「終活」の準備について確認していきましょう。
まず真っ先に考えるべきは、「誰に託すのか?」と言うことです。
エンディングノートを残すという行為は、書くこと自体が目的になるのではなく、遺志を継ぎ自分の思いを実現してもらうことにあります。
そのために自分の信頼できる人、そしてまた自分を理解してくれる人に託すことが、重要であることは言うまでもありません。
自分の周りで信頼できる人が直ぐに頭に浮かぶ場合は、その人に話をしてみてください。自分の思いを話す中で、相手も自分を心配してくれていることが分かれば、信頼の絆もより深いものになるでしょう。
あくまでも自分の気持ちや感覚といったものを大切にして選び、理詰めで選ぶのはやめてください。
また自分の周りに適任者が思い浮かばないという方も、少なくないと思います。
そんな場合は、行政書士などの専門職と<任意後見契約>を結び、将来の不安解消のパートナーとすることも選択肢の一つになります。
その場合もきちんと相手の人柄を見て、気持ちの合う人や、考え方の方向が一緒の人を選んでください。
託す相手を選びつつ、エンディングノートのほうも少しずつ用意を始めます。
将来に関する不安や心配事を整理し、その対策を考えるというのが、エンディングノートのメインテーマになります。
記録しておくべきポイントは、次の通りです。
・思い出の整理(自分史・家族や友人へのメッセージ)
・物の扱い(写真・日記・コレクション・PCやスマートフォンの処理)
・財産管理や身の回りの世話(認知症になった場合の対応、ペットについて)
・介護について(施設や介護方法の希望)
・終末医療の意思表示(延命治療について)
葬儀やお墓に関すること(誰に知らせて欲しいか、葬儀の形式、墓のスタイル)
・相続について(遺言書の作成)
ノートにまとめ自分の思いを正確に伝えれば済む項目、公正証書などの契約書を用意すべき項目の他に、民法の形式に則った厳格な様式が要求される遺言などに分かれます。
「エンディングノート」を利用する課題、公正証書を作成する課題など、それぞれの項目の特性に沿った対応をすることが、大変重要になります。
繰り返しますが、一番の目的は「課題の洗い出しと不安の解消」です。
日常生活を送る中で、何となく心に引っかかること、心配な問題、不安な状況などを、まずは洗い出し、一つずつ対策を立て将来の不安を消していきます。
エンディングノートも遺言も、書き直しができます。
たった今、現状の思いを記録しても状況に変化があれば、その部分だけ書き直し、バージョンアップをして行けば良いのです。
最悪なのは、心配や不安を感じながら気づかないふりをして、あるいは面倒だと後回しにして、何も対応を考えないことです。
不安や心配を目の前に並べ整理してみると、それだけで案外気持ちが落ち着くものです。
落ち着いた気持ちで将来の設計を静かに考えることは、心の中に安心を生む作業となって行くはずです。
そしてそれは、しだいに楽しみに変わってくることと確信します。