Do!「終活」 ~楽しみながら終活しましょう~

人生の終盤に大切な事を、分かりやすく解説します。

荷物の整理

皆さんは「遺品整理」という言葉を、お聞きになったことは、おありでしょうか?

 

「遺品整理」とは、ご本人がお亡くなりになったあと、後にのこされた遺品を整理・処分することを言います。

 

伊東市内にも遺品整理専門の業者さんがいて、依頼すれば家族が手を煩わすことなく、完璧にきれいに片づけてくださいます。

しかし手もかからず仕事が完璧だということは、取りも直さず料金も相応にかかるということになります。

 

私も業者さんに依頼して、空き家になった実家の整理をしたことがあります。

複数の業者さんを呼び、見積もりを出していただきましたが、どこも私が軽く考えていた以上の金額でした。(各社の料金はほぼ均衡していました。)

「単にゴミを捨てるだけのことに何故こんな大金を払うのか」、とやるせなくなったことを今でも覚えています。

 もちろん作業後の家は見違え、荷物どころかチリ一つなく掃除も行き届き、大袈裟ですが新築の瞬間を思い出したほどでした。

お仕事の結果には、大変満足いたしました。

 

 

単身世帯、ご夫婦2人の世帯は言うまでもなく、お子様が遠方に住んでいる場合など、家具や衣服、生活雑貨が片付いていないと、のちのち悲惨な事態を迎えることは想像に難くありません。

 

そしてそれだけではなく、元気に暮らしている間も、家の中に所狭しと物があふれていては、落ち着いた気持ちで生活できなかったり、歩行や移動の障害にさえなっているかもしれません。

 

持ち物の整理は、言うまでもなく「終活」の重要な項目の一つでもあります。

何度もお話して恐縮ですが、「終活」はより良く生きるために行うものです。

その考えに基づけば、不用品の整理は自分の手で、一日も早く行うことが正解です。

不用品が占めていたスペースが空き、思った以上に家の広さを感じることができるかもしれません。

また廊下などで歩行の邪魔になっていた物がなくなり、快適な生活が戻るかもしれません。

なにより物の少ない家は、掃除も容易に済み、清潔に気持ちよく過ごせることと思います。

 

ただそうは思っていても、なかなか処分ができないのが人情です。

いざ捨てるとなると、惜しくなったり、そのうち必要になるかもしれないなど、なかなか踏ん切りがつかないのが、常であると思います。

 

それに対しては、「割り切るしかありません!」と、言わせて頂くしかありません。

 

以前も書きましたが、写真やアルバムはスキャナーでデータ化しておく、1シーズン着なかった服は捨てる、本は売りに行く、日記やノートは処分するなど、思い切って実行してしまえば、身軽になる気持ちよさを実感できるでしょう。

 

 

syukatu-izu.hatenablog.com

 

 

仮に割り切れたとしても、今度は面倒くささが目の前に立ちふさがるかもしれません。

 

面倒くささと立ち向かうには、気の変わらないうち(なるべく午前中)に やってしまうとか、パートナーがいれば共同で作業するなど、工夫して頑張りましょう!

 

すっかり忘れていた、自宅の広さと清潔さに、きっと満足することを保証いたします。

 

 

終活の実例 ~パソコンのパスワード管理~

公正証書遺言のお手伝いをさせて頂いたお客様が先日お亡くなりになり、引き続き相続のお手伝いもさせて頂いた時の話です。

 

故人は会社勤め時代にパソコンやインターネットに習熟し、ご年齢の割にはパソコンやインターネットを活用されていらっしゃいました。

一方、奥様はパソコンやインターネットには全く興味がなく、一切ノータッチの状態でした。

お亡くなりになったご主人は、インターネットはもちろんのこと、メールやネットバンク、更にはネット証券までもご利用され、日常の文書もパソコンで管理されていました。

 

お二人にはお子様がいらっしゃらず、ご主人がお亡くなりになったら、さぞお困りになるだろうなと心配に思っていました。

そこである時ご主人に、パソコンとインターネット関連のIDとパスワードを、紙ベースで管理するようにお勧めすることにしました。

 

 

そしてご主人がお亡くなりになったあと、心配した通り、調べて欲しい事があるのでパソコンを起動させて欲しいと、奥様からご依頼が入りました。

もちろん奥様にお聞きしても、パスワードの事は何もご存知なく、パソコンを立ち上げる事すら不可能に思えました。

「何が心当たりのワードはありませんか?」と尋ね、記憶を辿って頂いているとき、奥様が何かを思い出されたような表情になりました。

奥の部屋に入ると、一冊のファイルを持ってお戻りになりました。

 

中にはパソコンのログインパスワードを始め、各種口座やクレジットカードのパスワードやIDが、完璧に記してありました。

このファイルの存在により、全ての情報を確認することができました。

 

もちろん全ての操作を、奥様の目の前で行ったことは、言うまでもありません。

 

銀行口座の取引明細やクレジットカードの請求明細の確認、それにサブスクリプション(一定期間の利用に対して代金を支払う課金システム)の痕跡を見つけたり、決済口座が判明したことにより、事後処理を的確に打つこができました。

奥様は家計に何もタッチしてなかったのですが、まるで故人が側で教えてくれているように手に取るように分かりました。

 

「終活」の威力を、身をもって体験した瞬間でした。

 

故人は私の勧めを聞き入れてくださり、少しずつIDやパスポートを書き進めてくださっていたようです。

お役に立てたことを嬉しく思うとともに、本当に助かったと胸をなでおろした瞬間でもありました。

「終活」まとめ ~その2~再び「エンディングノート」のすすめ

終活を進めるにあたっては、エンディングノートを活用することが有効です。

その理由としては、次の通りです。

 

エンディングノートにまとめることにより、記録を一か所に集約して残すことができる。

・文章にする事により、客観的に振り返ることができる。

エンディングノートの各項目を埋めていくことにより、考えの整理ができる。

・ノートの記述を目で追えるため、見直しや変更が容易にできる。

 

等があげられます。

 

もちろんここに挙げたのはほんの一例で、他にも様々な利点があります。

 

 

エンディングノートは葬儀社や、NPO、地域の社会福祉協議会などが、無料で配布している場合があり、そういうものを利用すれば敷居も低くなると思います。

他にも出版社等から、市販されているものもあります。

一般に有料で販売されているものの方が、ページ数が多い傾向があるようです。

しかし内容の充実度に惹かれページ数の多いものを選び、そのページ数の多さに圧倒されてしまい、書くことが億劫になっては元も子もありません。

あまり欲張らず最低限の項目から始め、時間をかけてじっくり、内容を積み上げていくのがよいと思います。

 

エンディングノートを書くと言う事は、今迄の人生の「振り返り」であり、ある意味<自分史>を書くと言う事に他なりません。

そういう意味でも、肩の力を抜いて楽しみながら書くのが良いと思います。

 

何よりも重要なのは、エンディングノートを作り上げることではなく、あなた自身が「終活」と言う一連の作業を楽しんで行うことです。

完璧にやろうと思うと辛くなります。できるところ、気が向くところから始めて、楽しみながら積み上げて行けば良いのです。

そうする事により、自分の人生を振り返り、今後の課題を認識するきっかけを手に入れ、これからの人生をより一層、輝かせてくれる原動力になるでしょう。

 

子供のころからの様々な思い出や、人生の重大局面での決断の数々など、書きだしたら切りがないかもしれません。

一つずつ丁寧に思い出しながら、自分史を綴る楽しみを味わうのも良いと思います。

 

 

エンディングノートには、法的な効力はありません。

しかし残された家族にご自身の思いを明確に示すという意味では、大変重要性があります。

 

どうか楽しみながら自分を振り返り、未来へ続く悔いのない自分史を綴ってみてください。

「終活」まとめ ~その1~「終活」に取り掛かるにあたって

さて一通り「終活」の内容を、概観をしてきました。

最後に、全体のまとめをしておきましょう。

 

 

まず初めに「終活」の定義ですが、私は「自分の半生を振り返り、死に至るまでの今後の人生を、より充実したものにするための手続き」と考えています。

死を意識した後ろ向きで孤独な作業などではなく、<今後の課題>を発見するための未来志向の作業と考えます。

つまり「終活」を通して悔いの残らない人生を送る事を、究極の目的と考えます。

 

 

例えば次のようなことを、もう一度静かな気持ちで整理してみましょう。

 

・行きたかったが行けないでいる場所(旅行)

・やりたかったが始められていない事

・対策を整えておくべき事

・身の回りの見直し

・病や死、老いの訪れに対する自分の考え方

・今まで貫いてきた信念

 

最初の記事でも書きましたが、「終活」とは<死を迎えるための準備>ではなく、<今を輝かせるための作業>だと言うことを、もう一度思い出してください。

その意識を強く持つことによって、「終活」を楽しく進めて行けるものと確信します。

 

 

それから終活を実施する際に、外してはならないポイントがいくつかあります。

ランダムに項目のみを上げると、だいたい次のような内容になります。

 

・相続人を確認しておく

・遺言の作成を検討する

・財産の整理をしておく(不動産の名義の確認、預貯金の口座の整理、有価証券の確認、生前贈与の検討など)

・借金の確認

・葬儀の形式と葬儀費用

・納骨や墓について

・葬儀は誰に任せたいか?

・祭祀継承者を誰にするのか?

・デジタル資産の管理(IDやパスワードの伝え方)

・介護に関する希望

認知症になってしまった時の対応

終末医療のこと

 

特別な事情がない限り、このような項目が検討できていれば、ほぼ十分だと思われます。

また所謂「お一人様」の場合には、この他に「死後事務委任契約」についての検討もしておけば完璧でしょう。

 

 

これらの事項の全てについて、検討する必要がある訳ではありません。

しかしこのような事項を網羅しておけば、後の面倒を見る家族の負担を大きく減らすことができます。

いえ負担が減るどころか、あなたに対する感謝と思い出に包まれながら、あなたの老後のお世話ができるためのかんが材料になるでしょう。

 

 

検討する対象が多岐に渡りますので、いっぺんに完成させる必要はありません。

興味が湧くテーマや、すでに考えがまとまっているテーマなど、自分なりの優先順位をつけて進めます。手を付けやすいところから徐々に積み重ねて、気楽に完成を目指しましょう。

一気に完成を目指すのではなく、少しずつ層を積み上げることを目指せば、心に余裕が生まれ、必ずや楽しい「終活」が行えることをお約束します。syuu

遺言の書き方 ~その6~自筆証書遺言の方式緩和について

約40年ぶりとなる相続法改正案が、2018年7月に成立したことは、皆さんご存知の事と思います。

今回は改正された内容のうち、自筆証書遺言の方式緩和に関することについて、ここで説明させて頂きます。

 

 

今回の相続法の改正により、「財産目録」につてワープロ・パソコンで作成することが可能になりました。

また不動産登記事項証明書のコピーや預金通帳のコピーを、添付することも可能になりました。(2019年1月13日施行)

 

従前は自筆証書遺言においては、財産目録を自筆で記述する必要がありました。

対象が不動産であれば地番や地籍を、預貯金の場合は銀行名や口座番号などを、正確に書く必要があります。記述が不正確だったり曖昧だったりすると、相続財産の特定が不十分になり、せっかく遺言に書いてあっても、遺言書に基づく相続が実行できなくなる恐れが生じます。

 

財産が多くなければ間違いもチェックできるでしょうが、財産が多い場合は、記述の正確を期すことが煩雑で大変な作業になります。

特に地方などでは、所有不動産の筆数が20筆、30筆と言う方も現実に少なくはないでしょう。また都市部であっても、銀行口座を多数持っている方は、少なからずいらっしゃる事と思います。

しかし今回の改正により方式が緩和され、財産目録をワープロ・パソコンで作成することや、登記事項証明書や通帳のコピーを添付できるようになりました。

そのため財産の明細の多い場合でも、自筆証書遺言を使いやすくなったと言えると思います。

ただしあくまでも、自筆証書遺言の<別紙>としてのみ適用されますので注意してください。

 

また財産目録の全ページ(両面に記載がある場合は両面)に、遺言者の署名と押印が必要です。これを怠ると、せっかくの遺言書が方式不備となり無効になってしまいますので、その点についても十分ご注意ください。

 

 

次に「法務局における自筆証書遺言保管制度」について、ご説明いたします。

こちらは2020年7月10日に施行されました。

 

遺言者が法務局に自筆証書遺言を持参した際には、法務局が遺言書の形式を確認したうえで保管を行います。このため方式不備により遺言書が無効になってしまうような事態を、未然に防ぐことが可能になります。

 

またこれまで自筆証書遺言は、遺言者自らが保管する必要がありましたので、遺言書の紛失や、偽造、破棄、隠匿などの恐れがありました。しかし法務局に自筆証書遺言を保管することで、このような事態を防ぐこともできます。

 

そして相続人、受遺者、遺言執行者が、法務局に被相続人の自筆証書遺言の存在を問い合わせることにより、遺言の存在を見落とす危険を防ぐことも可能になります。

 

これらに加えて、この保管制度を利用して自筆証書遺言を執行する場合には、通常自筆証書遺言の場合に必要となる、家庭裁判所の「検認手続」が不要となります。

検認手続を省けるため、遺言内容の実行までの時間が短縮されることにつながります。

 

 

以前と比べて使い勝手が増し、今後は自筆証書遺言証書を選択する人が増えるかもしれません。

遺言の書き方 ~その5~公正証書遺言

公正証書遺言については、民法969条1項から5項で厳格に定められています。

簡単に内容を概観すると、次の通りです。

 

公証役場において、遺言者が遺言の内容を口頭で公証人に伝えます。(この行為を「口授(くじゅ)」と言います。)

次に公証人が、その内容を筆記します。

筆記が済むと今度は、公証人が筆記した遺言を遺言者及び、証人(2名以上)に読み聞かせ、又は閲覧させ、遺言者及び証人が筆記が正確であることを承認し、各自これに署名、押印します。

最後に公証人が、その証書が定められた方式に従って作成された旨を付記して、署名押印して完成となります。

 

 

民法の定めはこのようになっていますが、実務的には前もって公証人と遺言の内容の打ち合わせを済ませ、作成当日に遺言者及び証人の前で読み上げ、承認をするという流れが一般的に行われています。

 

その際に、行政書士などの専門家は、一連の進行のお手伝いをさせて頂くことが可能です。

 

 

公証人や2名以上の証人など、公正証書遺言には、登場人物が多くなります。

加えて手数もかかりますので、どうしてもハードルが高く感じられることと思います。

さてそんな公正証書遺言のメリットとは、どんな所にあるのでしょうか?

 

メリットの1番目として挙げられるのは、<専門家が関与するため形式の不備や文言の不明等の恐れが少ない>と言う点でしょう。

更に<遺言書が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの恐れがない>点も、同じ程度に重要なメリットとして挙げることができます。

他には、<遺言の自書ができない人も作成が可能(自筆遺言証書では「自書」が必須条件)>です。

また<家庭裁判所の検認が不要>であることも、残された遺族にはメリットの一つと言えるでしょう。

 

それでは逆に「デメリットは?」問われると、<費用が発生する>ことや、<手続が面倒>であること、<公証人、証人に内容が知られてしまう>ことなどが挙げられます。

しかしこれらメリットとデメリットとを比較しても、メリットがデメリットを凌駕するものと考えます。

 

最後に1999年の民法改正により、969条の2として、「方式の特則」が定められたことを付け加えておきます。

 

内容を一言で申し上げると、障害者への配慮がなされた方式が採用されるに至った、と言う事です。

 

・口がきけない者に関する通訳人の通訳、あるいは自書を用いることで口授に代える(1項)

 

・遺言者または証人が耳が聞こえない者である場合には、筆記した内容を通訳人の通訳により伝えることで、公証人が読み聞かせることに代えられる(2項)

 

 

 

公正証書遺言は費用や手間が掛りはしますが、後々の信頼感を得ることができる点は、大いに考慮すべきことです。

 

専門家が、公正証書遺言をお勧めする所以がそこにあります。

遺言の書き方 ~その4~自筆証書遺言 作成のポイント

民法には、遺言できる事項の定めがあります。

具体的に挙げると、次の通りです。

 

・未成年後見人または未成年後見監督人の指定(民839・849)

・相続分の指定(民902)

・遺産分割の指定又はその委託と禁止(民908)

・遺産分割の際の担保責任についての定め(民914)

・遺贈(民964)

・遺言執行者の指定またはその委託(民1006)

・遺贈の減殺に関する別段の定め(民1034)

 

以上の事項は遺言でしかできません。

一方、次の事項は遺言によっても可能ですが、遺言に依らず生前に行うことも可能です。

 

・子の認知(民781②)

・相続人の廃除とその取消(民893・894②)

一般財団法人の設立(一般社団法人152②)

特別受益者の持ち戻し免除(民903③)

・祭祀主宰者の指定(民897)

・信託の設定(信託3②)

・保険金受取人の変更(保険77・73)

 

 

逆に上記以外の事項を遺言に残しても、法的効果はありません。

 

しかしこれ以外にどうしても遺言に残しておきたい事、例えば<葬儀の方法>や、<遺言の主旨>、<残る家族へ託す思い>などは、「付言」を活用して書き残すことをお勧めします。(もちろん「付言」には法的効果はありません。)

 

 

その他に細かい表現のことですが、次のような注意があります。

 

・相続人へ財産継承の表現は、「相続させる」とする。(不動産など単独登記が可能)

・相続人以外への財産承継は、「遺贈させる」とする。

・土地に関しては、「所在」と「地番」で指定する。

・建物は「所在」と「家屋番号」で指定する。

 

それと<その他すべての財産の承継人>の指定を、必ず行うようにしてください。

この指定をしておくことにより、万が一、遺言から漏れていた財産が後日発見されたときに、面倒な事態になることを防ぐことができます。

 

他に形式上の注意点として、遺言が複数枚にわたるときは、「契印」を押します。

この際の印鑑は、遺言書に押印した印鑑を使用します。

 

また自筆証書遺言は、相続開始後に遅滞なく家庭裁判所の検認を受ける必要があります。検認とは、遺言書の保存を目的とする行為です。発見時の遺言書の状態(内容)を家庭裁判所が確認し、偽造されたりすることを防ぐために行います。

検認は遺言書の効力の有無などを判断するものではありません。従って、検認後に遺言書の効力が争われることもあり得ます。

しかしながら自筆証書遺言において、検認は重要な段取りとなります。

そのため検認を徹底するために、遺言は封入し、遺言書と同じ印鑑で封印しておきます。加えて、封書もすべて自書し、遺言書と同じ日付を書いておきます。

また封筒に、「開封前に家庭裁判所へ提出すること」など、検認を促す文言を入れておくと尚よいでしょう。